毎回同じこと聞いてませんか?副作用の「出るタイミング」で差がつく!

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スタチン系を服用している患者さんには、毎回「横紋筋融解症」のチェックをしていませんか?

実はそれ、ちょっともったいないかもしれません。

横紋筋融解症は、服用初期に起こりやすい副作用。(初期に起こりやすいが、特定の条件では長期でも注意が必要)
にもかかわらず、何年も経っている患者さんに毎回同じ確認をしているとしたら、それは効率的とは言えません。

私自身、以前に外部講師の方からその点を指摘され、ハッとさせられました。

副作用には「初期に起こりやすいもの」と「長期間の服用で徐々に現れてくるもの」があります。

この違いを知っておくことで、より的確な服薬指導ができるようになります。

この記事では、どんぐり未来塾さんの書籍を参考に、副作用を「服用初期に注意すべきもの」「長期で注意すべきもの」に分けて整理していきます。

最後まで読んでいただければ、きっと服薬指導の質が一段階アップするはずです。

副作用には出るタイミングがある

副作用といえば「怖いから毎回確認!」というイメージを持ちがち。
でも、全ての副作用が毎回出るわけではない

  • 服用初期に起こりやすい副作用
  • 長期服用でじわじわ現れる副作用

これを知っておくことで、毎回の指導にメリハリがつく。

機序別:副作用の3つの分類

選択
  • 薬理作用
  • 薬物毒性
  • 薬物過敏症(アレルギー)

薬理作用による副作用

薬の作用が関係して起こる副作用。頻度は高めで、投与初期にも長期にも起こりうる。

以下の3つに分類すると整理しやすい。

(1)主作用の過剰発現
 期待される効果が出すぎてしまう副作用。
 → 量を調整すれば改善することが多い。
 例:降圧薬で血圧が下がりすぎ「ふらつき」、抗凝固薬で「出血」
(2)副次的な薬理作用
 本来の標的以外に作用してしまう副作用。選択性の問題。
 → 高齢者では特に注意が必要。
 例:三環系抗うつ薬で「口渇」「便秘」、抗ヒスタミン薬で「眠気」
(3)薬理作用の消失(中止後反応)
 薬の急な中止で起こる副作用(離脱症状・反跳反応)
 → 中止の際は段階的に減量する工夫が必要。
 例:β遮断薬の中止で「頻脈・高血圧」、ステロイド中止で「副腎不全」

薬物毒性による副作用

薬の分解や排泄の過程で臓器に負担がかかることで起こる。
投与量が多い・期間が長いほどリスクが上がる。長期服用後に出やすい副作用

肝臓(分解する働き)腎臓(体の外に出す働き)がダメージを受けやすい。

例:アセトアミノフェンの肝障害、シスプラチンの腎障害

ただし例外もある。
横紋筋融解症は、薬が筋肉の細胞に急にダメージを与えてしまうことで起こる。
そのため、薬が体にたまるのを待たずに、飲み始めてすぐに起こることがある。

薬物過敏症(アレルギー)による副作用

免疫系が薬を異物とみなして攻撃する副作用。

発現したら即中止が原則。発現は少ないが、重篤なケースも多い。

多くは服用開始から半年以内に起こる。

例:ペニシリンでアナフィラキシー、NSAIDsで蕁麻疹や喘息

時間経過と副作用の関係(まとめ)

分類起こりやすい時期備考
薬理作用初期~長期投与中ずっと注意が必要
薬物毒性長期に多い(例外あり)横紋筋融解症は例外で早期にも発現が多い
薬物過敏症(アレルギー)初期(6ヶ月以内)早期発現・重篤なことがある

服用初期には薬物過敏症と薬理作用的副作用を説明、チェックする。
服用が長くなってきたら、薬理作用的副作用と薬物毒性を説明、チェックする。

各薬剤ごとの副作用分類と指導ポイント

スタチン系薬剤の副作用の分類

スタチン系の主な副作用
🔸横紋筋融解症
🔸肝機能障害
🔸発疹・かゆみ

一つ一つ分類すると

🔸横紋筋融解症薬物毒性による副作用
横紋筋融解症は、スタチンが筋肉に直接ダメージを与えることで起こる。
つまり、薬の作用そのものが、筋細胞に“毒”のように働いてしまうので薬物毒性。
薬物毒性は長期服用後に起こることが多いが、横紋筋融解症は投与開始後半年以内である場合が多い
📚参考:日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』

🔸発疹・かゆみ薬物過敏症による副作用。


🔸肝機能障害薬物毒性による副作用、薬物過敏症による副作用両方がある。
判断のポイントは、発症時期と肝機能検査値の推移
薬物毒性は発症するのに時間がかかり、ASTやALTが徐々に増加する。
薬物過敏症はすぐに発症。ASTやALTは急上昇する。
また「発熱」「発疹」「全身倦怠感」なども過敏症診断に重要。

薬理作用的副作用はほぼなし。

指導ポイント
初期:筋肉痛、倦怠感、尿の色、発疹・かゆみ、ASTやALTの急上昇
長期:肝機能障害の症状(倦怠感・黄疸など)とAST/ALTの推移を定期的にチェック

横紋筋融解症とは?

筋肉(特に腕や足などの大きな筋肉)が壊れて、中の成分が血液に流れ出てしまう状態壊れた筋肉から出る成分(ミオグロビンやカリウム)が体に悪さする。

出るもの体への影響
ミオグロビン腎臓を詰まらせて、腎不全になることがある
カリウム心臓に影響し、不整脈や心停止の原因になる

指導ポイント
副作用の頻度とタイミングを考慮する。
横紋筋融解症は重篤な副作用であるが、横紋筋融解症は重篤な副作用であるが、発生頻度は約0.08%程度と比較的まれである。 したがって、毎回の服薬指導で必ず確認する必要はなく、 初回服用時や、併用薬の変更・増量などリスクが高まる場面で説明するのが適切
📚参考 重篤副作用疾患別対応マニュアル
したがって、毎回の服薬指導で必ず確認する必要はなく、初回服用時や、併用薬の変更・増量などリスクが高まる場面で説明するのが適切

フィブラート系薬剤の副作用の分類

フィブラート系の主な副作用
🔸筋障害・横紋筋融解症
🔸肝機能障害
🔸胆石症

🔸筋障害・横紋筋融解症薬物毒性による副作用。

🔸肝機能障害→スタチン系と同様薬物毒性による副作用、薬物過敏症による副作用両方がある。

🔸胆石症薬理作用的副作用
フィブラートはコレステロールの胆汁排泄を増加させる作用があり、それにより胆石が形成されやすくなる。

指導ポイント
初期:筋肉痛・赤褐色尿・全身のだるさ、ASTやALTの急上昇
長期:肝機能障害の症状(倦怠感・黄疸など)とAST/ALTの推移を定期的にチェック
常に:胆石症状(腹部痛や吐き気)

カルシウム拮抗薬の副作用の分類

カルシウム拮抗薬の主な副作用
🔸めまい・ふらつき
🔸歯肉肥厚
🔸ほてり
🔸動悸
🔸便秘
🔸肝機能障害
🔸発疹・かゆみ

🔸めまい・ふらつき薬理作用的副作用

🔸歯肉肥厚薬理作用的副作用
歯ぐきの血管が広がり、血液が集まりすぎてむくむために起こる。

🔸頭痛薬理作用的副作用
頭痛は頭の血管が拡張することで起こる。

🔸ほてり薬理作用的副作用
ほてりは皮膚の血管が拡張し、血流が皮膚表面に集まることにより起こる。

🔸動悸薬理作用的副作用
動悸は血圧が下がると体が反応して交感神経を活性化し、心拍数が上がる。

🔸便秘薬理作用的副作用
便秘は消化管の筋肉(平滑筋)にもカルシウムチャネルがあり、これがブロックされると腸の動きが弱くなって便秘が生じる。

🔸肝機能障害薬物過敏症、薬物毒性

🔸発疹・かゆみ薬物過敏症

指導ポイント
初期:ASTやALTの急上昇、発疹
長期:肝機能障害の症状(倦怠感・黄疸など)とAST/ALTの推移を定期的にチェック
常に:ふらつき、便秘、顔のほてり、歯肉の変化(肥厚)

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の副作用の分類

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の主な副作用
🔸高カリウム血症
🔸めまい
🔸腎機能障害
🔸肝機能障害
🔸発疹・かゆみ
🔸血管浮腫

🔸高カリウム血症薬理作用的副作用
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は「アルドステロン」というホルモンを減らして血圧を下げる薬である。
でもこのホルモンは、カリウムを体の外に出す役割もある。
薬でホルモンが減ると、カリウムが出にくくなって体にたまり、高カリウム血症になる。

🔸めまい薬理作用的副作用

🔸腎機能障害薬理作用的副作用
ARBが輸出細動脈を拡張させすぎると、腎臓のろ過の力が弱まり、腎機能が下がることがある。これは薬の効きすぎによる「薬理作用的副作用」である。


🔸肝障害薬物過敏症、薬物毒性

🔸発疹・かゆみ薬物過敏症

🔸血管浮腫薬物過敏症
血管浮腫は、顔や喉などが急にふくらむ

指導ポイント
初期:発疹・かゆみ、血管浮腫、ASTやALTの急上昇の有無を確認
長期:肝機能障害の症状(倦怠感・黄疸など)とAST/ALTの推移を定期的にチェック
常に:高カリウム血症や腎機能低下の兆候(脱力感・食欲不振・クレアチニン上昇など)

まとめ

副作用は、大きく分けて「薬理作用的副作用」「薬物毒性的副作用」「薬物過敏症的副作用」の3つがある。
服用初期には薬物過敏症的副作用に注意し、長期服用中は薬物毒性的副作用の発現に目を向けることが大切である。
また、薬理作用的副作用は、服用初期・長期を問わず起こりやすく、発現頻度も比較的高いため、常に意識しておきたい副作用だ。


副作用をこのように分類して考えることで、「なぜこの時期にこの副作用が出やすいのか?」という視点を持てるようになります。
きっちり分類することが目的ではなく、「副作用をこう捉える方法もあるんだな」という参考になれば嬉しいです。

今回ご紹介した本は、副作用の全体像をつかむのにとても役立つ一冊で、薬物動態についても丁寧に解説されています。
半減期をもとに薬の効果発現のタイミングを考える方法など、日々の業務にすぐ活かせる知識が身につきます。

「この薬=この副作用」と丸暗記するのではなく、患者さんの服用時期や背景に応じたアドバイスができる薬剤師を目指していきたいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆さんの服薬指導のヒントになれば幸いです。

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