骨量のピークは20代と言われていますが、加齢とともに骨量は減少し、高齢になると骨形成よりも骨吸収が優位になるため、増やすことが難しくなります。そのため、適切な栄養摂取と運動が欠かせません。
一方で、ビタミンDやカルシウムの摂取が高齢者にとってあまり意味がないと考える方もいるかもしれませんが、実際には非常に重要です。これらの栄養素は骨折予防に不可欠であり、骨の健康を維持し、転倒や骨折のリスクを軽減する役割を果たします。
高齢者が健康な骨を維持するためには、栄養摂取だけでなく、生活習慣の改善も重要です。本記事では、信頼できるデータをもとに、効果的な栄養摂取の方法や生活習慣の工夫について詳しく解説していきます。
骨密度と高齢者の課題

骨量が減少するメカニズム
骨量は加齢に伴い減少する。その背景には以下のような要因がある
- ホルモンの変化:閉経後の女性ではエストロゲンの減少が骨吸収を促進する。
- 栄養不足:カルシウムやビタミンDの摂取不足。
- 運動不足:骨に適度な負荷がかからないと骨密度が低下する。
- 老化の影響:新陳代謝が低下すると、古くなった骨が分解され、新しい骨が作られるサイクル(骨のリモデリング)が遅くなり、骨の強度が低下する原因となる。
- 慢性的な病気:糖尿病や腎疾患は骨の健康に悪影響を与えることがある。
骨量の推移
骨量は一般的に20代でピークに達し、その後減少に転じる。以下は骨量の推移を年代ごとに示した概要である
- 10~20代:骨形成が活発で、骨量が最大に向かう時期。
- 30代:ピークを維持するが、骨吸収と形成がほぼ均衡状態。
- 40代以降:骨吸収が形成を上回り、骨量が徐々に減少。
- 閉経後の女性:エストロゲンの急激な減少により、骨量が加速度的に減少。
- 高齢者:骨量が著しく減少し、骨折リスクが顕著に増加。
骨粗鬆症の現状
日本では骨粗鬆症の推定患者数は2015年時点で約1,590万人(男性410万人、女性1,180万人)と報告されているが、2022年の最新研究ではこの数が増加傾向にあることが示されている。年齢別の有病率は、60代で約20%、70代で約30%、80代で約50%とされており、特に高齢女性に多く見られる傾向がある。これらのデータは、骨粗鬆症の予防と適切なケアの重要性を示している。
骨粗鬆症は骨折リスクを高め、寝たきりや介護が必要になる主な原因の一つとされている。
さらに、骨粗鬆症による経済的負担も問題視されている。医療費や介護費の増加に加え、患者本人やその家族の生活の質にも大きな影響を与える。そのため、早期の予防対策が必要である。
カルシウムとビタミンDの重要性

カルシウムの役割
カルシウムは、骨や歯の主要な構成成分であり、以下の重要な役割を果たす。
- 骨や歯の形成と維持
カルシウムは骨や歯の硬さを保ち、強度を維持するために不可欠。 - 神経伝達の調整
神経細胞が情報を適切に伝達するために、カルシウムが必要。 - 筋肉の収縮を助ける
筋肉が正しく収縮・弛緩するためには、カルシウムが重要な役割を果たす。 - 血液の凝固を促進
出血した際に血液を固めるために、カルシウムが必要。 - ホルモンや酵素の働きを助ける:
体内のさまざまな酵素やホルモンの働きを調整し、代謝をサポートする。
カルシウムの摂取量
推奨摂取量
(日本人の食事摂取基準2025年版)
- 18~29歳男性:800mg/日
- 30~74歳男性:750mg/日
- 75歳以上男性:700mg/日
- 18~74歳女性:650mg/日
- 75歳以上女性:600mg/日
現状の摂取量
(2019年 国民健康・栄養調査)
- 男性:517mg/日
- 女性:494mg/日
男女ともに推奨摂取量を大きく下回っており、慢性的なカルシウム不足が指摘されている。
(参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準2025年版
厚生労働省 2019年 国民健康・栄養調査)
カルシウム不足が引き起こす問題
- 骨の脆弱化による骨折リスクの増加。
- 骨粗鬆症の進行。
- 筋肉の収縮異常や神経伝達の障害。
ビタミンDの役割
ビタミンDは、骨の健康維持に欠かせない栄養素であり、以下の重要な役割を果たす。
- カルシウムの吸収促進
ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を助ける働きがあり、骨の形成と維持に必要不可欠。 - 骨の強化と骨折予防
カルシウムの適切な利用をサポートし、骨密度を保つことで骨折のリスクを低減する。 - 筋力維持と転倒予防
筋肉の働きを正常に保つことで、高齢者の転倒リスクを軽減する。 - 免疫機能の向上
免疫細胞の働きを調整し、感染症の予防にも関与している。
カルシウム吸収率と食品別の特性
カルシウムの吸収率は食品によって異なる。
以下に具体的な食品別の吸収率を示す。
乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズ)
- 吸収率:約40%
- 具体例
牛乳コップ1杯(200ml):約220mgのカルシウムを含み、そのうち88mgが吸収。
ヨーグルト(100g):約120mgのカルシウムを含み、そのうち約48mgが吸収。
小魚(骨ごと食べる魚)
- 吸収率:約30%
- 具体例:ししゃも1尾(72mgのカルシウム含有)では約22mgが吸収。
野菜(小松菜・モロヘイヤ)
- 吸収率:約20~25%
- 小松菜はシュウ酸が少ないため比較的吸収率が高い。
野菜(ほうれん草)
- 吸収率:約10%
- シュウ酸が多く含まれているため、体内でカルシウムと結合しやすく、不溶性のシュウ酸カルシウムを形成する。このため、カルシウムの吸収が妨げられ、十分に利用できなくなる可能性がある。
乳製品のカルシウム吸収率が高い理由3つ
- リン酸とカルシウムのバランス:乳製品にはリン酸とカルシウムが理想的なバランスで含まれており、体が効率的に吸収できる形になっている。
- 乳糖の働き:乳糖は腸内を酸性にし、カルシウムを溶けやすい形に変えることで吸収を助ける。
- カゼインホスホペプチド(CPP)の効果:CPPはカルシウムが結晶化して吸収されにくくなるのを防ぎ、吸収率をさらに高める。
ビタミンDの摂取量
推奨摂取量
18歳以上の男女:8.5 µg/日
(参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準2025年版 )
実際の摂取量
- 男性:6.2 µg/日
- 女性:5.2 µg/日
(参考:厚生労働省 国民健康・栄養調査)
男女ともにビタミンDの摂取が不足していることが示されています。
ビタミンDが不足が引き起こす問題
- 骨のカルシウム吸収が低下し、骨密度が減少。
- 骨粗鬆症や骨折のリスクが上昇。
- 筋力低下や転倒リスクの増加。
効率的なビタミンD摂取のポイント
- 魚類(サケ、サバ、イワシなど)やきのこ類(干しシイタケ、マイタケなど)を積極的に食べる。
- 日光浴を1日15~30分行い、体内でビタミンDを生成する。
- 必要に応じてサプリメントを活用する。
過剰摂取について

カルシウムの過剰摂取について
耐容上限量(日本人の食事摂取基準2025年版)
成人男女ともに2,500mg/日
カルシウムを摂り過ぎると、以下の健康リスクが生じる可能性がある。
腎結石のリスク
- 過剰なカルシウム摂取は尿中のカルシウム濃度を高め、腎結石を引き起こすことがある
高カルシウム血症
主な症状
- 吐き気や嘔吐
- 食欲不振
- 倦怠感
- 心拍数の低下や不整脈
他のミネラルの吸収阻害
過剰なカルシウム摂取は鉄やマグネシウムなど、他の重要なミネラルの吸収を妨げることがある。
便秘
カルシウムを多量に摂取すると便秘を引き起こす可能性がある。
そのため、カルシウムの摂取は推奨量を意識しつつ、耐容上限量を超えないようにすることが重要である。サプリメントや強化食品を使用する場合は、摂取量を把握してバランスを取るようにする。
ビタミンDの過剰摂取について
耐容上限量(日本人の食事摂取基準2025年版)
成人男女ともに100 µg/日
ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、過剰摂取は以下の健康リスクを引き起こす可能性がある。
高カルシウム血症
カルシウムのところに記載。
腎障害
過剰なビタミンDは腎臓に負担をかけ、腎機能障害を引き起こすことがある。
軟組織の石灰化
血管や心臓など、骨以外の組織にカルシウムが沈着する可能性がある。
ビタミンDをサプリメントで摂取する際は、推奨量と上限値を厳守する
骨の健康を維持するための運動

運動の種類 | 具体的な運動 | 目安 |
骨に刺激を与える運動 | ウォーキング ジョギング | 毎日40分以上 |
筋力トレーニング | スクワット ダンベル運動 | 週2〜3回 |
バランストレーニング | 片足立ち ヨガ ラジオ体操 | 週3回以上 |
ストレッチ | 股関節・ふくらはぎ・ 太もものストレッチ | 毎日 |
まとめ
高齢者の骨折予防には、カルシウムとビタミンDの適切な摂取が不可欠です。加齢に伴う骨密度の低下を防ぐため、食事からの栄養摂取が重要になります。特にビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨の強度を維持します。
乳製品や小魚、きのこ類などを意識的に取り入れ、バランスの取れた食事を継続することが推奨されます。また、適度な運動も骨密度の維持に欠かせません。ウォーキングや筋力トレーニングを行い、下肢の筋力を鍛えることで、転倒リスクの軽減につながります。
高齢者の健康な生活を支えるために、栄養と運動の重要性を日々の業務に活かしていただければ幸いです。
コメント