「パリエットⓇ」「ネキシウムⓇ」「タケキャブⓇ」——どれも胃薬としてよく見かけるけれど、結局どう違うの?
そんなふとした疑問、現場で働く私たち薬剤師にとっても、とても大切なポイントですよね。なんとなく「タケキャブは効きそう」「パリエットは昔からあるし安全そう」といったイメージだけで説明していませんか?
今回のテーマは、各PPI(プロトンポンプ阻害薬)とタケキャブⓇを徹底比較。
それぞれの作用機序の違い、適応症の特徴、そして薬ごとの個性(半減期、効果の持続時間、副作用など)をわかりやすく整理します。
この記事を読めば、「この薬はこういう患者さんに合ってる」「ここに注意して服薬指導しよう」と、自信を持って説明できる自分に近づけるはずです。
一緒に、日々の業務に活かせる知識をアップデートしていきましょう!
- PPIは服用タイミングが大事
- タケキャブⓇの服用タイミングは食前食後関係ない
- タケキャブⓇは効果発現が早く、長時間効果あり。
- PPIの方が歴史が長いのでデータが豊富。
- PPI、タケキャブⓇも8週間超えたら薬歴にコメントを残す必要あり。
胃酸はどうやってできるのか?
胃酸は、胃の壁に存在する壁細胞によって分泌される。
この細胞にはプロトンポンプ(H⁺/K⁺ ATPase)と呼ばれる特別な仕組みが備わっており、胃酸の産生に重要な役割を果たしている。
プロトンポンプは、水素イオン(H⁺)を細胞外、すなわち胃の内腔へ排出し、その代わりにカリウムイオン(K⁺)を細胞内へ取り込むという、イオン交換の機構である。
このようにして胃の中に放出された水素イオンは、同時に分泌される塩化物イオン(Cl⁻)と結合し、塩酸(HCl)が形成される。
この塩酸こそが、いわゆる胃酸である。胃酸は、食物の消化を助けるとともに、食物とともに体内に侵入する病原菌に対して殺菌作用を持つなど、生体防御の一端も担っている。
PPI
PPIは、プロトンポンプにくっついて働きを止める。
PPIは、飲んだ時点ではプロトンポンプにくっつくことができない。
胃の中などの酸性の場所に行くと、活性化型(効く形)に変わる。
活性化されたPPIは、ポンプに結合して胃酸を止める
服用タイミング
胃が動いていないときには効果が出にくい。というのも、PPIは強い酸(胃酸)によって活性化されて初めて効く薬だから。
私たちの胃は、食事をしていない間は「休止期」に入っており、胃酸の分泌も少なめになる。
この休止期の状態では、PPIは活性化されず、効果を発揮しにくい。
そのため、PPIは食事の30分から1時間前、つまり胃酸が出始める前に飲むことが推奨されている。タイミングを逃すと、薬がきちんと働いてくれないこともある。
結合の仕方
PPIは、活性化されたあとに、プロトンポンプの中にある「チオール基(-SH)」という場所にくっつく。このくっつき方は、共有結合というとても強い結びつきである。この結合は、とても強力なので、時間がたっても自然にはずれない。
PPIの半減期は1~2時間と短めなのに1日1回で良いのはこの結合の強さのためである。
プロトンポンプは、実は私たちの体の中で常に新しく作り替えられている。
具体的には、24時間以内に全体の約25%が新たに合成され、古いものと入れ替わっている。
そのため、朝にPPI(プロトンポンプ阻害薬)を服用して酸の分泌を抑えても、夜になる頃には新しく生まれたポンプが活動を始め、再び胃酸を分泌してしまうことがある。
プロトンポンプ阻害薬が新しく作られていることについて書かれてある文献
PPIは腸溶性コーティング
PPIは酸に不安定なので腸溶性コーティングがされている。

あれ?酸で活性化するのに酸に弱い?
なんか矛盾してない?
これがどういう事なのか以下に示していく。
胃の中は非常に強い酸(pH 1~2くらい)で、金属も溶けるほどの酸の強さ。もしPPIをそのまま胃に入れると、薬は活性型になる前に、この強烈な酸によって分解されてしまう。
だから、胃の酸を避けるために「腸溶性コーティング」という特殊なコーティングをして、小腸で薬を溶かす。
小腸に到達したPPIは、そこで初めて腸溶性コーティングが溶け、中身の薬剤(未活性型)が小腸の壁から血液に吸収される。
この時点ではまだ「未活性型」、つまり薬としての効果はない。吸収されたPPIは血液の流れにのって、胃の壁細胞に運ばれていく。胃の壁細胞はプロトンポンプがある場所。この場所こそが、PPIが本来働くべき場所である。
胃の壁細胞の中には、『弱酸性』(pH 3~5くらい)の小さな空間がある。
PPIは、この『弱酸性』の空間に来ると、ようやく「活性型」に変身する。この「弱酸性」は、強い胃酸ほど強烈ではないため、PPIが壊れずに活性化できる「ほどよい酸の環境」。活性型に変化したPPIは、壁細胞内でプロトンポンプに結合する。プロトンポンプにくっつくことで胃酸を作る働きを止め、結果的に胃酸の分泌を抑える。

胃の中の酸は強酸性(pH 1~2)
壁細胞内の酸は弱酸性(pH 3~5)
ほどよい酸の環境でPPIは活性型に変わるよ!
タケキャブⓇ
プロトンポンプ(H⁺/K⁺ ATPase)は、水素イオン(H⁺)を胃腔内へ排出し、代わりにカリウムイオン(K⁺)を細胞内へ取り込むという、イオン交換の仕組みによって胃酸を生成している。
タケキャブⓇは、このプロトンポンプがカリウムイオンを取り込もうとするタイミングを狙い、あたかもカリウムイオンであるかのように振る舞い、ポンプに結合する。その結果、カリウムイオンの取り込みが阻害され、水素イオンの排出も妨げられるため、胃酸の産生が効果的に抑えられる。
このようにタケキャブⓇは、カリウムイオンの「なりすまし」によってポンプの働きをブロックし、強力かつ持続的に胃酸の分泌を抑制する点が特徴である。
休止期でも効果あり
武田薬品が公開しているタケキャブⓇの動画によれば、本剤はpH6.5〜7.5という中性に近い環境下でも、安定して酵素を阻害することができる。これは、従来のPPIと異なり、酸性環境による構造変化(活性化)を必要とせず、そのままプロトンポンプに結合し作用を発揮するためである。
その結果、活性化する必要がないのでPPIよりも速やかに効果が発現し、さらに胃酸分泌が行われていない「休止期」にある壁細胞に対しても作用する可能性が示唆されている。これにより、より持続的かつ安定した胃酸分泌抑制効果が期待できる薬剤と位置づけられている。
効果時間が長い
胃の壁細胞に存在する分泌細管内は、非常に強い酸性環境である。この過酷な環境下において、タケキャブⓇの大部分はイオン化(解離)された状態となる。イオン化されたタケキャブⓇは、脂溶性の細胞膜を通過しにくいため、壁細胞内にとどまりやすいという特性を持つ。これにより、薬剤は分泌細管内に高濃度で蓄積され、プロトンポンプに対して効率よく作用を発揮することができる。
さらに、タケキャブⓇは7〜8時間という比較的長い半減期を有しており、分泌細管内に長時間とどまることが可能である。この持続性により、食事刺激によって新たに活性化されたプロトンポンプにも作用し、胃酸分泌を効果的に抑制する。
タケキャブⓇは優れた細胞内滞留性と持続的な作用を併せ持ち、長時間にわたり安定した胃酸分泌抑制効果を発揮する薬剤である。
PPIとタケキャブⓇの違いをざっくり言うと
特徴 | PPI | タケキャブⓇ |
結合 | 不可逆的(一度くっつくと離れない) | 可逆的(時間がたつと離れる) |
効き始め | ゆっくり | すぐに効く |
効きの強さ | ややマイルド | 強力に胃酸を抑える |
食事の影響 | あり(タイミングが大事) | ほぼなし |
効いてる時間 | 長いが安定するまでに日数が必要 | 1回でしっかり持続 |
効果時間
オメプラールⓇ
オメプラールⓇの添付文書より
胃潰瘍及び十二指腸潰瘍患者に対し、オメプラールⓇ 20mg 錠を朝食後 30 分に 1日1回14日間連続投与したところ、7日目のAUCにおいてのみ有意な増加が認められたが、Cmax、AUC ともに7日目と14 日目の間では増加は認められず、オメプラールの血漿中濃度は7日以内に定常状態に達しているものと考えられる
→安定した治療効果を得るには、おおよそ1週間の継続投与が必要であるといえる。
ネキシウムⓇ
オメプラールⓇの効果のある「S体」だけを取り出した薬
飲んでから2時間くらいで効き始めて、数時間しっかり胃酸を抑えてくれる。
効果はオメプラールⓇと同じくらい強くて、人による差が出にくい(安定して効きやすい)のが特徴。
タケプロンⓇ
薬の効果(胃酸抑制)は、投与後すぐに始まる。
症状(胸やけなど)の改善は、個人差があるが、数日~4週間以内に現れるケースが多い。
特に高リスク患者では投与初期から改善傾向が見られる
パリエットⓇ
飲んだその日から効果が出始める薬。
1週間ほどで安定して強い効果が続く。
タケキャブⓇ
胃酸の抑制作用は1日目からあらわれることが臨床試験で確認されている。
タケキャブⓇの添付文書には
健康な成人男性に10mgまたは20mgを1日1回投与したところ、1日目から胃のpH(酸の強さ)を上昇させる効果が見られた。特に20mgでは、pH4以上を保つ時間が約63%と高く、かなりの効果が初日から出ている 。
CYP代謝
オメプラールⓇ
主に CYP2C19 で代謝される。一部は CYP3A4 によっても代謝される。CYP2C19による水酸化が主要経路で、CYP3A4の関与はそれに比べて4分の1程度。日本人では約13~20%がCYP2C19の機能が弱いPM(Poor Metabolizer)に該当 。薬の効き方に個人差があることに注意
ネキシウムⓇ
ネキシウムⓇは主に CYP2C19、一部 CYP3A4 によって代謝される。
ネキシウムⓇはCYP2C19よりもCYP3A4という別の酵素の力を多く使って代謝される。
CYP2C19の働きに差がある人でも、ネキシウムⓇの効き方は安定しやすい。
タケプロンⓇ
CYP2C19とCYP3A4の2つの酵素で分解される
CYP2C19が働きにくい体質の人では、タケプロンⓇの血中濃度が高くなる可能性がある。
パリエットⓇ
CYP2C19やCYP3A4で代謝されるけれど、その影響は小さく、相互作用も少ないのが特徴。
そのため、他の薬との飲み合わせや、代謝の個人差が気になる患者さんにも使いやすいPPI。
タケキャブⓇ
CYP3A4で代謝されるが、同時CYP3A4を軽度に阻害する作用もある。
クラリスⓇ等CYP3A4で代謝される薬剤との併用に注意が必要である。
CYP2C19の影響は受けない
PPIとタケキャブⓇの比較まとめ
病気 | PPI | タケキャブⓇ |
胃潰瘍・十二指腸潰瘍 | 全てOK 胃:8週間まで 十二指腸:6週間まで | OK 胃:8週間まで 十二指腸:6週間まで |
逆流性食道炎(GERD) | 全てOK 通常8週間まで。 難しい例は量を増やしたり、1日2回にしたりする | OK 通常8週間まで。 |
非びらん性GERD ※びらん=ただれがないタイプ | 一部のPPIだけOK オメプラールⓇ10mg パリエットⓇ5mgと10mg タケプロンⓇ15mg ネキシウムⓇ10mg | 適応なし |
ピロリ菌除菌 | オメプラールⓇ:20mgを1日2回(合計40mg/日) タケプロンⓇ: 30mgを1日2回(合計60mg/日) パリエットⓇ: 10mgを1日2回(合計20mg/日) ネキシウムⓇ: 20mgを1日2回(合計40mg/日) | 1回20mgを1日2回 除菌成功率が高く期待されている |
低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制 | 一部のPPIのみOK タケプロンⓇ15mg パリエットⓇ5mgと10mg ネキシウムⓇ10mgと20mg | タケキャブⓇ10mg |
ゾリンジャー・エリソン症候群(胃酸が出過ぎる病気) | 全てOK | 適応なし |
非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制 | タケプロンⓇ15mg ネキシウムⓇ10mgと20mg | タケキャブⓇ10mg |
同じ薬でも成分mgで適応が変わってくることがあるので注意。
ピロリ菌除菌に使われるPPI、タケキャブⓇについて
タケキャブⓇを使った治療の方が、今までのPPIを使った治療よりもピロリ菌をしっかり退治できる。
日本消化器病学会ガイドラインより下記の記載あり
「一次除菌治療では、ボノプラザン(タケキャブⓇ)を用いた3剤併用療法が、PPIを用いた療法に比べて除菌成功率が有意に高く、また耐性菌に対する除菌成功率も高いことから、一次除菌療法の第一選択肢となりうる。」
PPIが8週間超えて処方されていたら
PPIの添付文書には、「逆流性食道炎に対しては通常8週間までの投与」と書かれているため、それ以上続ける場合、何らかの理由(再発予防や維持療法など)を薬歴に残すことが必要になる。
維持療法の場合
「逆流性食道炎の再発予防目的で維持療法中。医師と相談の上、PPI継続指示あり。」
再燃・再発による継続の場合
「再燃による治療延長と考えられる。長期投与だが、再発予防の観点から継続は妥当と判断。」
他のリスク因子がある場合
「NSAIDs・低用量アスピリン併用中。潰瘍再発予防として継続中。」
このようなコメントを残すと薬局の個別指導対策になると思う。
Q なぜPPIは長期投与してはいけないのか?
A PPIの長期投与は様々な疾患や病態と関連しており注意が必要だから。
- 感染症のリスク増加
胃酸による殺菌作用低下により肺炎や特発性細菌性腹膜炎などの感染症リスクが上昇. - 吸収障害
胃酸低下によりビタミンB12、鉄、カルシウム、マグネシウムなどの吸収が阻害され、貧血や骨粗鬆症を引き起こす可能性。 - 腎障害
慢性腎臓病との関連が報告されている
維持療法って何?
逆流性食道炎(GERD)は、治療して一度よくなっても、再発しやすい病気である。
特に次のような人では、再発リスクが高いと言われている
- 重症だった人(びらんがひどかった)
- 高齢者
- 肥満がある
- 食道裂孔ヘルニアがある
- 長期間NSAIDsやアスピリンを飲んでいる など
このような患者さんでは、一度治っても薬をやめたらすぐ再発してしまうことがある。そのため、最初の8週間で治療 → そのあと維持療法に切り替えるのが一般的である。
治療の流れ(イメージ)
① 胸やけや痛みが強い → タケプロンⓇ30mg × 8週間
② 内視鏡などで「治った」と判断
③ 再発しないように → タケプロンⓇ15mgで維持療法(長期)
まとめ
PPIは飲むタイミングが重要で個人差あり。
タケキャブⓇは服用タイミングはいつでもよく個人差が少なく即効性あり。
低用量アスピリン投与時、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制は適応あるものとないものがある。成分量でも適応あるなしが違ってくるので注意。
以上、PPIとタケキャブⓇの特徴や使い分けについて、実際の添付文書等をもとに整理してみました。
私自身、これまで日々の業務の中で、どの薬もバランスよく処方されている印象があり、それぞれの薬剤の違いについて深く意識することが少なかったのですが、改めて添付文書やガイドラインに目を通すことで、思っていた以上に細かな違いがあることに気づかされました。
今回の学びを通して、薬剤ごとの適応や用法、治療方針の選択に対する理解がより深まりました。
日々の服薬指導や疑義照会、薬歴の記載において、より根拠ある対応ができるようになる一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
今後も現場に役立つ情報を、わかりやすく丁寧にお届けできるよう努めてまいります。
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