「ARBってどれも似たような薬に見えるけれど、実際に何が違うの?」
処方箋で目にする機会も多く、薬局ではおなじみのARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)。現在、日本では7種類が使用されており、それぞれの特徴を理解しておくことは薬剤師にとって重要です。
例えば、「アジルバは強力な降圧効果がある」「ミカルディスは血糖値の高い人に良い」など、なんとなくのイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?しかし、こうした印象だけで理解していると、患者さんに説明するのに迷ってしまうことも。
そこで今回は、ARBの違いをわかりやすく整理し、それぞれの特徴や適応のポイントを詳しく解説していきます。「なんとなく」ではなく、明確な根拠をもってARBを説明できるようになりましょう!
ARBの共通点
作用機序
体の中には「アンジオテンシンⅡ」という物質があり、これが「アンジオテンシンⅡ受容体」にくっつくと、血管が縮まり、血圧が上がる。
ARBは、この「アンジオテンシンⅡ受容体」にくっつくのを防ぐ薬である。
適応症
高血圧症の治療に使用。
副作用
- 腎機能低下:血管が広がりすぎると腎臓の血流が減り、機能が低下することがある。
- 高カリウム血症:カリウムの排泄が減り、血中濃度が上がる。
- 低血圧・めまい:降圧作用によりふらつくことがある。
ARBが高カリウム血症を起こす機序
ARBがアンジオテンシンⅡの作用をブロックする
(アンジオテンシンⅡは副腎に働きかけて アルドステロンを分泌させる。アルドステロンはナトリウムを体に残し、カリウムを尿へ捨てる働きがある。)
つまりARBはアルドステロンの分泌を抑え、カリウムの排泄を減らし、高カリウム血症を引き起こす。
禁忌
妊婦・授乳婦:胎児への影響のため使用不可。
たんぱく結合率が高い
効果持続時間が長い→1日1回投与
相互作用
- カリウム補給剤・カリウム保持性利尿薬との併用注意:高カリウム血症のリスク。
- NSAIDs併用注意:腎機能低下の可能性。
ARBの相違点
適応症
薬剤名 | 適応症 |
---|---|
ディオバン(バルサルタン) | 高血圧症 |
ミカルディス(テルミサルタン) | 高血圧症 |
オルメテック(オルメサルタン) | 高血圧症 |
ニューロタン(ロサルタン) | 高血圧症、高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症 |
ブロプレス(カンデサルタン) | 高血圧症、※腎実質性高血圧症、慢性心不全(軽症~中等症、ACE阻害薬が適さない場合) |
イルベタン(イルベサルタン) | 高血圧症 |
アジルバ(アジルサルタン) | 高血圧症 |
各薬剤は基本的に高血圧症に適応があるが、ニューロタンやブロプレスは追加の適応症を持っている。
※腎実質性高血圧症とは、「腎臓が悪くなることで血圧が上がる病気」
用法・用量
薬剤名 | 通常の用法・用量(成人) | 最大投与量 |
ディオバン | 40~80mgを1日1回経口投与 | 1日最大160mg |
ミカルディス | 40mgを1日1回経口投与 | 1日最大80mg(肝障害のある患者は40mg) |
オルメテック | 10~20mgを1日1回経口投与 | 1日最大40mg |
ニューロタン | 25~50mgを1日1回経口投与 | 1日最大100mg |
ブロプレス | 4~8mgを1日1回経口投与 | 1日最大12mg |
イルベタン | 50~100mgを1日1回経口投与 | 1日最大200mg |
アジルバ | 20mgを1日1回経口投与 | 1日最大40mg |
半減期
薬剤名 | 半減期(t₁/₂) |
ディオバン | 約4~6時間 |
ミカルディス | 20~24時間 |
オルメテック | 8.7~11.0時間 |
ニューロタン | 約2時間(活性代謝物:約4.5~5時間) |
ブロプレス | 約10時間 |
イルベタン | 約10.1~15.2 時間 |
アジルバ | 約13時間 |
ブロプレスにはα相とβ相がある
α相(分布相)とβ相(消失相)の違い:
- α相(分布相):
- 血中から組織への移行が主な過程。
- 初期の急速な濃度低下を示す。
- β相(消失相):
- 主要な消失過程(腎排泄・肝代謝)により血中濃度が低下するフェーズ。
- 臨床的に重要な「薬効持続時間」の指標となり、これを消失半減期とみなす。
食事の影響の有無
薬剤名 | 食事の影響 |
オルメテック | 食事の影響なし |
ディオバン | 食事によりCmax(最高血中濃度)およびAUC(血中濃度曲線下面積)が約40%減少 |
イルベタン | 食事の影響なし |
ミカルディス | 食後投与でCmaxが57%、AUCが32%低下 |
ニューロタン | 食後投与で吸収速度が低下するが、吸収量の減少はわずか |
ブロプレス | 食事の影響についての明確な記載なし |
アジルバ | 食事の影響なし |
どのARBも食事の影響を受けない
ミカルディスは確かに食事の影響を受けそうではあるが、メーカーのホームページには以下の文章が書かれていた。
食前・食後のどちらで飲んでも、血圧を下げる効果に大きな違いはなかった
食事の有無による副作用の発現率の違いもなかったと書かれてある。食前・食後どちらでも服用可能だが、毎日同じタイミングで服用することが推奨される。
ディオバンも食事の影響を受けそうであるが、インタビューフォームに以下のことが書かれていた。
海外で実施した単回投与の体内動態試験で食事の影響が認められたため、米国で臨床効果に及ぼす連続投与時の食事の影響を高血圧患者で検討した。その結果、空腹時と食後投与の比較では、降圧効果・安全性に影響はなく、日本を含め各国の添付文書の用法・用量は、食前後の投与制限がない
代謝経路
薬剤名(一般名) | 代謝経路 | 主要代謝酵素(CYPなど) | 排泄経路 |
ディオバン | 肝臓で代謝 | CYP450の関与なし | 胆汁排泄が主 |
ミカルディス | 肝臓でグルクロン酸抱合 | CYP450の関与なし | 胆汁排泄が主 |
ニューロタン | 肝臓代謝 | CYP2C9、CYP3A4 | 胆汁排泄が主 |
ブロプレス | 小腸でエステラーゼにより活性化、肝臓でCYP代謝 | CYP2C9の影響を受ける可能性があるものの、臨床的に重要な薬物相互作用は少ない | 胆汁排泄が主 |
イルベタン | 肝臓で代謝 | CYP2C9の影響を受ける可能性があるものの、臨床的に重要な薬物相互作用は少ない | 胆汁排泄が主 |
オルメテック | 小腸でエステラーゼにより活性化 | CYP450の関与なし | 胆汁排泄が主 |
アジルバ | 小腸でエステラーゼにより活性化 | CYP450の関与なし | 胆汁排泄が主 |
CYPを介した代謝を受けるのはニューロタン(CYP2C9・CYP3A4)
胆汁排泄が主の薬剤が多く、腎機能低下の影響を受けにくい。
各薬について
ミカルディス
ミカルディスにはPPARγ活性化作用がありインスリン抵抗性を改善する。「メタボサルタン」とも呼ばれている。ミカルディスはメタボリックシンドロームや肥満を伴う高血圧患者のファーストチョイスとも言われている。
PPARγとは何か?
脂肪と血糖のコントロールをするスイッチ
スイッチをオンにすると
脂肪細胞が元気になり、血液中の糖を取り込みやすくなる
筋肉や肝臓のインスリンへの反応がよくなる
結果として、インスリン抵抗性が改善され、血糖値が下がる!
半減期がARBの中で最も長い→朝から翌朝まで効果が持続し、早朝高血圧の抑制にも適している
ディオバン
半減期が短い(4~6時間)なのに1日1回投与である。
これはディオバンが受容体に強く結合し、解離がゆっくりなため、血中濃度が下がっても降圧効果が持続するためである
アンジオテンシン 受容体拮抗薬,バルサルタン(ディオバン)の薬理学的特性および臨床効果
ブロプレス
腎機能の悪い患者さんの高血圧(腎実質性高血圧)にも使われる。
慢性心不全にも適応あり。
ニューロタン
世界で一番最初に開発されたARB
2型糖尿病に伴う糖尿病性腎症(高血圧+蛋白尿)の適応をもつ
ニューロタンは半減期が短い(2時間)が活性代謝物の半減期が長く(4.5~5時間)ニューロタン本体よりも約10~40倍強力にAT1受容体(アンジオテンシンⅡ受容体)を阻害するので十分に効果を発揮する。1日1回の投与で、24時間を通して安定した降圧効果が得られることが臨床試験で確認されている。
ニューロタンにはURAT1阻害作用があり、臨床的にも尿酸値を低下させることが報告されている
イルベタン
糖尿病性腎症の進行を抑制する
IDNT試験(糖尿病性腎症の進行を抑えることができるかどうかを確認する試験)で証明された。
ただし、適応は高血圧のみ
イルベサタンはURAT1阻害作用を持ち、尿酸の排泄を促進する。
その結果、血清尿酸値が有意に低下する
オルメテック
日本発のARBであり、国内で非常に多く処方されてきた実績がある
オルメテック投与で糖尿病性腎症の発症抑制。ROADMAP試験より。
ただし、適応は高血圧のみ
アジルバ
強力な効果から発売当初「スーパーARB」とも称された
ブロプレス(カンデサルタン)の後継品
ブロプレスとの比較
- 降圧効果:アジルバの方が強力で持続的。
- 薬理特性:アジルバは受容体結合が強固で、脂溶性や生物学的利用率も高い。
(アジルバは長時間しっかり血圧を下げ、効率よく作用する) - 臨床データ:アジルバはブロプレスよりも優れた24時間降圧効果を示す。
- メリット:アジルサルタンはインスリン抵抗性改善や腎保護作用も期待できる。
まとめ
ARBは基本的な降圧効果や安全性が共通していますが、作用時間、薬物動態、適応症、付加効果などに違いがあります。
糖尿病・メタボがあるなら → ミカルディス(PPARγ活性)
蛋白尿があるなら → ニューロタン or イルベタン
心不全の適応があるなら → ブロプレス
とにかく強い降圧効果が必要なら → アジルバ
といった選択が考えられます。患者さんごとの病態や生活習慣に応じた適切な服薬指導を行いましょう。
最後までお読み下さりありがとうございました。
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