「スタチンならどれでも同じ」と思っていませんか?
脂質異常症の治療でよく使われるスタチン系薬。しかし、一口にスタチンといっても種類はさまざま。それぞれ作用の強さや特徴が異なり、処方される背景には理由があります。
「なぜこの患者にはこのスタチンが処方されているのか?」と疑問に思ったことはありませんか?
本記事では、スタチンの違いを分かりやすく整理し、それぞれの特徴や選択のポイントを解説します。処方意図を深く理解し、患者さんへの説明や服薬指導に役立てていただければと思います。
用法用量
薬剤名(一般名) | 通常投与量 | 最大投与量 | 投与回数 |
---|---|---|---|
メバロチン (プラバスタチン) | 10mg/日 | 20mg/日 | 1~2回/日 |
リポバス (シンバスタチン) | 5mg/日 | 20mg/日 | 1回/日 |
リピトール (アトルバスタチン) | 10mg/日 | 20mg/日(家族性は40mg/日) | 1回/日 |
クレストール (ロスバスタチン) | 2.5mg/日 | 20mg/日 | 1回/日 |
リバロ (ピタバスタチン) | 1~2mg/日 | 4mg/日 | 1回/日 |
メバロチン、リポバスは夕食後~就寝前の服用が推奨されている。
その理由は半減期が短く、コレステロール合成が夜間に亢進するため、夜に作用濃度を高める狙いがある
その他の薬剤は投与時間は任意で、朝でも夜でも効果に差はない。
半減期が比較的長く持続効果があるため、夜間投与にこだわる必要はない。
ただし習慣化のため毎日同じ時間に服用するよう指導する。
参考 日本動脈硬化学会
効果の強さ(スタンダードスタチン vs ストロングスタチン)
スタチン系薬剤はLDLコレステロール低下作用の強さから、日本では従来型の「スタンダードスタチン」と、より強力な「ストロングスタチン」に分類される
ストロングスタチン:リバロ、クレストール、リピトール
スタンダードスタチン:メバロチン、リポバス
ストロングスタチン同士、およびスタンダードスタチン同士ではLDL低下効果に大差はないとされている。
しかしアストラゼネカのホームページにこのような資料が掲載されていた。
クレストールのLDL-C低下効果と臨床試験の結果まとめ
1. LDL-C低下効果が最も強力
クレストールは現在使用されているスタチンの中で最も強力なLDL-C低下作用を持つ
第III相比較臨床試験の結果、他のスタチン(リポバス・メバロチン・リピトール)よりも優れたLDL-C低下効果を示した。
2. LDL-C低下率
[リピトールとの比較]
クレストール10mg: 43%
リピトール10mg: 35%
HDL-C上昇率
クレストール:12%増
リピトール:8%増
→ LDL-C低下作用だけでなく、HDL-C上昇作用もクレストールの方が優れている。
[リポバス・メバロチンとの比較]
クレストール10mg:49%
リポバス20mg:37%
メバロチン20mg:28%
3. LDL-C治療目標値到達率が高い
LDL-C管理のガイドライン目標値に到達した患者の割合は、ロスバスタチンの方が高かった。
[リピトールとの比較]
リピトール10mgの到達率:19%
クレストール10mgの到達率:47%
[リポバス・メバロチンとの比較]
メバロチン20mgの到達率:7%
リポバス20mgの到達率:19%
クレストール10mgの到達率:67%
→ クレストールはより低用量で、より多くの患者を治療目標値に到達させる
4. 治療が困難な患者(家族性高コレステロール血症: HeFH)に対する効果
LDL-C低下率(20~80mg投与)
患者さんに 20mg、40mg、80mg の3つの量で、クレストールと リピトールを飲んでもらったところどの量でも クレストールの方がリピトールよりも、LDL-Cを有意に下げることが分かった。
心臓病などのリスクが高い人(ハイリスク患者)を対象にクレストールとリピトールの効果を比べたところ
クレストールを飲んだ人では24%が目標値に達した
リピトールを飲んだ人のうち、目標のコレステロール値に達したのは3%だけ
- ロスバスタチンは現在使用されているスタチンの中で最も強力なLDL-C低下作用を持つ
同じ用量であれば、リピトール、リポバス、メバロチンよりも強力 - LDL-C治療目標値に達する患者の割合が最も高い
- HeFH(家族性高コレステロール血症)などの治療が難しい患者でも有効
- スタチン治療の第一選択薬として考慮されるべき薬剤
特に高リスク患者(心血管疾患既往、家族性高コレステロール血症)において、ロスバスタチンは最も有効な選択肢となる可能性が高い。
参考 アストラゼネカ
またアメリカの文献でもLDL低下効力を比較すると、クレストールが最も強力で、リピトールがそれに次ぐと言われている
HMG-CoA Reductase Inhibitors
逆にメバロチンやリポバスは効果が標準的で、中等度リスクの患者に用いられることが多くなる。
脂溶性・水溶性の違い
分類 | 水溶性スタチン | 脂溶性スタチン |
---|---|---|
代表薬 | メバロチン、クレストール | リポバス、リピトール、リバロ |
溶解性 | 水に溶けやすい | 水に溶けにくく、脂溶性溶媒に溶けやすい |
代謝経路 | CYP酵素の関与が少ない(主に酸化・抱合による代謝) | CYP酵素を介して代謝されることが多い(CYP3A4が主) |
排泄経路 | 腎臓からも排泄される | 胆汁排泄が主(尿中排泄は少なめ) |
肝臓への負担 | CYPを介さないため比較的低い | CYP3A4で代謝されるため肝負担が大きい(特にリポバス、リピトール) |
腎臓への負担 | 腎排泄があるため、腎機能低下時に投与量調整が必要 | 腎排泄が少ないため、腎機能低下の影響を受けにくい |
薬物相互作用 | CYPを介さないため相互作用が少ない | CYP阻害薬(グレープフルーツジュース、マクロライド系抗生物質など)との相互作用が多い |
筋障害リスク | 比較的低い | やや高い(CYP3A4で代謝される薬ほどリスクが高い) |
リバロ(ピタバスタチン)は脂溶性スタチンであるにも関わらず、CYP酵素をほとんど介さない代謝経路をとる。
メバロチンは水溶性スタチンだが、胆汁排泄が主なため腎排泄が少なく、腎機能への影響が少ないと考えられている。
水溶性、脂溶性どちらもコレステロールを下げる効果には大きな違いはない
水溶性スタチン
体の中で水に溶けやすい性質を持つスタチン
メバロチン クレストール
①肝臓だけが薬をキャッチしやすい。
水溶性スタチンは、肝臓にある「専用の入り口(OATP)」 を通って肝臓に入る。
この入り口は 肝臓に多くあって、ほかの場所には少ないので、薬は肝臓に集まりやすくなる。
② 水に溶けやすいと、体の中を自由に動けない。
水溶性の薬は、細胞の壁をスルッと通り抜けることができない。
つまり、勝手にいろいろな臓器に広がることができず、肝臓の入り口がある場所にしか行けない。
③ 筋肉など、ほかの臓器には届きにくい
スタチンの副作用には、筋肉が傷つく「横紋筋融解症」 がある。
でも、水溶性スタチンは筋肉に入りにくいので、この副作用が脂溶性のスタチン系より起こりにくい。
④血液中ではたんぱく質と結びつかず、腎臓からも一部排出される
⑤CYP酵素(肝臓の代謝酵素)の影響を受けず、そのまま体外に出やすい
脂溶性スタチン
脂に溶けやすい性質を持つスタチン
リポバス リピトール リバロ
①肝臓以外にも広がりやすい
脂に溶けやすいため、細胞膜を通りやすく、全身の臓器に広がる。
そのため、肝臓だけでなく 筋肉や脳などにも影響を与える可能性がある。
②筋肉の副作用(横紋筋融解症)のリスクがやや高い
筋肉にも移行しやすいため、筋肉の痛みや横紋筋融解症のリスクがある
高齢者や腎臓が悪い人は注意が必要
③主に肝臓で分解される
脂溶性スタチンは主に肝臓で代謝(分解)される。
そのため、肝機能が悪い人には使いにくい場合がある。
④血液中ではほとんどがたんぱく質と結びついている(90%以上)
半減期
スタチンの消失半減期(T1/2)
薬剤名 | 消失半減期(T1/2) |
---|---|
リピトール | 約10時間 |
クレストール | 約20時間 |
リバロ | 約11時間 |
メバロチン | 約2.5時間 |
リポバス | 約4.5時間 |
※リポバスは活性阻害物質の半減期(薬の効果の持続時間に関係するため)
用法、用量のところと被る話にはなるが
半減期が短い薬(リポバス)は、夜にコレステロールが多く作られるため就寝前に飲むのが効果的
半減期が長い薬(リピトール、クレストール、リバロ)は、1日中効果が続くので、朝でも夜でもOK(患者の生活リズムに合わせて飲めばよい)
腎障害、肝障害時
スタチンの代謝・肝機能障害・腎機能障害時の対応
薬剤名 | 肝代謝 | 腎代謝 | 肝機能障害時 | 腎機能障害時 |
---|---|---|---|---|
リピトール | CYP3A4代謝 | 腎排泄は極めて少ない | 禁忌:重度の肝障害 | 腎機能障害患者は、横紋筋融解症のリスクが高い |
クレストール | CYP2C9・CYP2C19代謝 (CYP酵素の関与はあるが影響は少ない) | 10.4%が腎排泄 | 禁忌:重度の肝障害 | 減量:重度腎障害(eGFR<30)では5mg以下に制限 |
リバロ | グルクロン酸抱合・β酸化(CYP関与ほぼなし) | 腎排泄は極めて少ない | 禁忌:重度の肝障害 | 腎機能障害患者は、横紋筋融解症のリスクが高い |
メバロチン | 酸化・抱合(CYP関与なし) | 約13~14%が腎排泄 | 肝機能障害のある患者では慎重投与 | 腎機能障害患者は、横紋筋融解症のリスクが高い |
リポバス | CYP3A4代謝 | 腎排泄は極めて少ない | 禁忌:重度の肝障害 | 腎機能障害患者は、横紋筋融解症のリスクが高い |
代謝経路の違い
- CYP3A4代謝(相互作用が多く、肝負担が高い):リピトール、リポバス
- CYPをほぼ介さない代謝:リバロ(グルクロン酸抱合)、メバロチン(酸化・抱合)
禁忌
- メバロチン以外は重度の肝障害では禁忌
減量が必要
- クレストール → 重度腎障害(eGFR<30)では5mg以下に制限
食事の関係
スタチンの食事の影響と服用タイミング
薬剤名 | 食事の影響 |
---|---|
リピトール | 食事の影響なし(食事によって薬の吸収速度は遅くなるが、最終的な吸収量にはほとんど影響しない) |
クレストール | 食事の影響なし(食後に服用すると吸収が緩やかになりCmaxは低下するが、最終的な吸収量にはほとんど影響がない) |
リバロ | 食事の影響なし(食後投与でCmaxが36%低下するが、総吸収量は変化なし) |
メバロチン | 食事の影響なし(食後投与はAUC、Cmaxいずれにおいても若干高値を示したが、両投与間に有意な差はみられなかった) |
リポバス | 食事の影響なし(食事によって薬の吸収がやや遅くなるものの、最終的な吸収量にはほぼ影響がない) |
基本的に食事の時間を気にせず服用できる。
まとめ
- メバロチン:相互作用が少なく、安全性が高いが効果はマイルド。
- リポバス:相互作用が多く、CYP3A4代謝薬との併用注意が必要。
- リピトール:LDL低下効果が強く、心血管リスクを下げるエビデンス多数。
- クレストール:最も強力なスタチンで、安全性が高いが腎機能低下時は減量が必要。
- リバロ:糖代謝への影響が少なく、HDL上昇作用が強い。

「何を優先するか」で薬を選ぶことが大事!
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