【アウィクリ】1週間効果が持続するインスリンを経験豊富な薬剤師が分かりやすく解説!

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「添付文書やメーカーサイト、資料などの専門的な情報を前にすると、圧倒されてしまう…そんな経験はありませんか?」
膨大な情報量や難解な専門用語に目を通すうちに、「これ、どう使えばいいんだろう?」と悩み、結局後回しにしてしまうことも多いですよね。そして、忙しい日々の中でそのまま忘れてしまい、気づけば重要な情報を見落としてしまう…。こんな繰り返しに心当たりがある方も少なくないはずです。

私は2007年から薬局薬剤師として働き、多くの挫折や失敗を経験してきました。転職や異動を通じてさまざまな病院の門前薬局で学ぶ中で、膨大な情報を効率よく理解し、活用する方法を試行錯誤してきました。

今回の記事では、1週間効果が持続するインスリン「アウィクリ」の要点を、誰でも短時間で理解できるように分かりやすく解説します。
「難しい文章はもう疲れた」「忙しくて時間が取れない」という方でも大丈夫!この記事を読むことで、アウィクリの概要をすっきり理解できると思います。

特徴まとめ

2025年1月30日に発売予定の1週間効果が持続するインスリン製剤、アウィクリについて簡単にまとめました。

週に1回だけ打つ

インスリンの効果をここまで長持ちさせた秘密とは?

インスリンの形を少し変えた。
→インスリンが体内の受容体に結合しにくくしなるよう調節し、作用が速すぎないよう工夫をした。

脂肪酸をくっつけた。
→この脂肪酸の働きで、インスリンは血液中のタンパク質「アルブミン」とくっつく。
アルブミンとくっついている間はインスリンは働かないが、時間が経つと少しずつ離れて、効果を発揮し始める。

患者さんへのメリット

  • 介護者の負担軽減
  • コンプライアンス向上
  • 注射回数が減ることで負担軽減

介護者への負担軽減

年齢を重ねるにつれて、膵臓の機能低下によるインスリン分泌の減少する。そのため血糖値が上昇し、糖尿病のリスクが高まる。特に高齢者においては、糖尿病の発症は深刻な問題である。中にはインスリン注射が必要となる方も少なくない。高齢になるにつれて、視力や手の動きが不自由になったり、認知機能が低下したりすることで、自分でインスリン注射を行うことが難しくなる場合がある。
実際に当薬局にも80代90代でインスリン注射を打っている方が数名いる。さらに、その患者さんが認知症や緑内障などの病気を併せ持っていることが多い。

このような状況において、週1回投与のアウィクリは、高齢者の方々、特に介護を必要とする方々にとって、大きな福音となる可能性がある。

コンプライアンス向上

アウィクリは週1回投与であるため、注射忘れのリスクを大幅に減らすことができる。これは、血糖コントロールの安定に繋がり、長期的な合併症のリスク低減にも貢献する。

注射回数が減ることで負担軽減

注射回数がたった一回減るだけで、時間を節約できたり、心理的な負担も大きく軽減される。ほんの少しの手間の違いが、日々の生活にゆとりをもたらし、心身ともに楽になる。

効果

添付文書からの情報のまとめ

インスリン治療歴のない2型糖尿病患者 

  • 対象者: インスリン治療歴のない2型糖尿病患者984人(うち日本人164人)
  • 試験内容: 本剤(週1回投与)とインスリン・グラルギン(1日1回投与)の効果を比較
  • 投与期間: 52週間
  • 併用薬: メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、チアゾリジン薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、GLP-1受容体作動薬
  • 開始用量: 本剤70単位、インスリン・グラルギン10単位
  • 調整方法: 血糖値に基づいて投与量を調整
  • 主要評価項目: HbA1cの変化量
  • HbA1c変化量: 
    アウィクリ -1.55±0.06 
    インスリン・グラルギン
    (ランタス)-1.35±0.05
  • 結果: 本剤はインスリン・グラルギン(ランタス)に対して非劣性(効果は同等以上)を確認

基礎インスリンを使用して治療を受けている2型糖尿病患者

  • 対象者: Basalインスリン治療中の2型糖尿病患者526人(うち日本人100人)
  • 試験内容: 本剤(週1回投与)とインスリン・デグルデク(1日1回投与)の効果を比較
  • 投与期間: 26週間
  • 併用薬: メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、チアゾリジン薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、GLP-1受容体作動薬
  • 投与量調整:
    初回投与時、本剤はBasalインスリンの7倍量の1.5倍を投与
    その後、Basalインスリンの7倍量を投与し、適宜調整
  • 主要評価項目: HbA1cの変化量
  • HbA1cの変化量: 
    アウィクリ-0.93±0.05 
    インスリン・デグルデク
    (トレシーバ)-0.71±0.06
  • 結果: 本剤はインスリン・デグルデク(トレシーバ)に対して非劣性(効果は同等以上)を確認

基礎インスリン➕追加インスリン(速効型インスリン等)を使用している2型糖尿病患者

  • 対象者: Basal-Bolus療法で治療中の2型糖尿病患者582人(うち日本人85人)
  • 試験内容: 本剤(週1回投与)とインスリン・グラルギン(1日1回投与)の効果を比較
  • 投与期間: 26週間
  • 併用薬: メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、チアゾリジン薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、GLP-1受容体作動薬(併用または非併用)
  • ボーラスインスリン: インスリン・アスパルト(1日2〜4回)
  • 投与量調整:
    初回投与時、本剤はBasalインスリンの7倍量の1.5倍を投与
    その後、Basalインスリンの7倍量を投与し、適宜調整
  • 主要評価項目: HbA1cの変化量
  • HbA1cの変化量: 
    アウィクリ-1.16±0.05 
    インスリン・グラルギン
    (ランタス)-1.18±0.05
  • 結果: 本剤はインスリン・グラルギン(ランタス)に対して非劣性(効果は同等以上)を確認

基礎インスリン➕追加インスリン(速効型インスリン等)を使用している1型糖尿病患者

  • 対象者: Basal-Bolus療法で治療中の1型糖尿病患者582人(うち日本人80人)
  • 試験内容: 本剤(週1回投与)とインスリン・デグルデク(1日1回投与)の効果を比較
  • 投与期間: 26週間
  • 併用薬: Bolusインスリン(インスリン・アスパルト)を1日2〜4回投与
  • 投与量調整:
    本剤群では、初回投与時に試験前のBasalインスリンの7倍量をさらに1.5倍または2倍に増量
    その後は、Basalインスリンの7倍量を投与し、適宜調整
  • 主要評価項目: HbA1cの変化量
  • HbA1cの変化量: 
    アウィクリ-0.47±0.07
    インスリン・デグルデク
    (トレシーバ)-0.51±0.06
  • 結果: 本剤はインスリン・デグルデク(トレシーバ)に対して非劣性(効果は同等以上)を確認

低血糖


血糖値は2-4日起こりやすい。

連日投与型の持効型インスリン製剤と比べて、1型と2型のどちらでも低血糖が起こりやすい傾向があった。特に1型で低血糖が多く見られた。

アウィクリの導入方法

新規に使う

開始投与量30単位/週〜(4単位/日〜に相当)

目標空腹時血糖値を考慮して±10〜20単位調整する。

(空腹時血糖値は、基礎インスリンが適切に働いているかを判断する重要な指標。)

 
 

従来の連日基礎インスリン製剤からアウィクリ注への変更

ややこしそうだが
ノボ ノルディスク ファーマのサイトに
簡単な換算表があったのでそれを使えばOK。


具体的な計算方法として、以下に一例を示します。


連日投与の持効型溶解インスリン製剤を8単位打っている人
初回投与量の計算:
連日投与の持効型溶解インスリン製剤1日投与量(8単位)の7倍(一週間分)を計算
8 × 7 = 56単位
初回は通常、この7倍量の1.5倍を投与します
(ただし患者さんの血糖マネジメントや低血糖の状況を見てしない場合あり)
56 × 1.5 = 84単位

単位数は10の倍数になるよう四捨五入する。
56単位→60単位
84単位→80単位

初回は80単位を投与。
2回目からは60単位に戻す。
3回目以降の調整
患者の目標空腹時血糖値に応じて、±10〜20単位/週の幅で調整。

投与量は多くなるように見えるが、アウィクリは連日投与型持効型インスリン製剤の7倍濃縮
アウィクリ 1mL 700単位
連日投与型持効型インスリン製剤 1mL 100単位

7日分投与するために7倍したが7倍濃縮されたものを投与するので薬液量だけを見ると1回投与量同じということになる


 

アウィクリ注から連日投与型持効型インスリン製剤への変更

アウィクリ注の投与量を7で割った用量が目安。

2型糖尿病と1型糖尿病の調整方法が若干違う

2型糖尿病

最後にアウィクリ注を投与してから2週間後に連日投与型持効型インスリン製剤を開始。

ただし朝食前血糖値が180mg/dLを超えたら場合は2週間を待たずに早めに開始する。

1型糖尿病

最後にアウィクリを投与してから1週間以降、朝食前血糖値が180mg/dLを超えた時点で連日投与型持効型インスリン製剤を開始。

打ち忘れた場合の対処方法

忘れた場合はすぐに打つ。

次の投与は4日以上空ける。

注射の期限

アウィクリ注フレックスタッチは
総量300単位と700単位あり

総量300単位は6週間以内
総量700単位は12週間以内に使用すること。

300単位の注射には薬液量が0.43mL
700単位の注射には薬液量が1mL
しか入っていないから、カートリッジの途中までしか薬液入っていない。
(トレシーバ等は3m L入っている。)

もーちゃん
もーちゃん

1週間効果が持続する注射です。
低血糖は注射して2-3日後に多いと言われていますが、常に注意しましょう。
元々連日投与のとレシーバ等を打っていた人は1回目と2回目の単位数が違うので注意しましょう。

以上、メーカーからの情報をまとめてみました。

実際にアウィクリの処方が出てきたら情報を加筆したり、修正したりしたいと思います。

この記事が日々の仕事の一助になれば嬉しいです。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


参考文献

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